愛知県瀬戸市は、“せともの”という言葉の由来になったまちで、千年以上もやきものを“ずっと”つくり続けている産地です。
その歴史の長さから「日本六古窯」として日本遺産にも認定されています。
瀬戸市内には、洞・赤津・品野・水野と大きくわけて、窯元や陶芸家が集まる4つの地区があります。せっかく産地を訪れるなら、つくっている工房に行きたいな、と思う方も多いと思いますが、平日はみなさんやきものの製造をされており、土日はお休みが基本です。
そんななか、瀬戸では貴重な工房に併設する施設やギャラリーをお持ちの窯元やメーカーさんをご紹介します。
民藝の思想を大切にする窯元「瀬戸本業窯」が開く、工藝ギャラリー
瀬戸・洞地区にある「瀬戸本業窯」は、瀬戸のものづくりの原点ともいえる、江戸時代以前から続くものづくりを続けている窯元です。瀬戸の土、自然の釉薬を使い、すべて手仕事で作られています。代表的なものとしては、日常の器である「石皿」、さらに骨董品としての人気も高い「馬の目皿」や「麦藁手」といった絵柄の器をつくっています。
入口すぐに工藝ギャラリーが併設されており、「瀬戸本業窯」の器はもちろん、全国の民藝品が販売されています。
ギャラリーの奥には、瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム[瀬戸民藝館]

「瀬戸本業窯」は、“民藝”とも深い関わりを持ち、陶芸家・濱田庄司とバーナード・リーチが瀬戸本業窯を訪れ、仕事を高く評価されています。
そんな瀬戸本業窯が、2022年に開いた場が「瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム[瀬戸民藝館]」です。
この地のものづくりの文化を知っていただきながら、うつわが人をつなぎ、その背景にある人びとの「暮らし」を伝えていくことを目指しているといいます。

1階は瀬戸の陶器に関するものづくりの原点がわかる内容が伝えられていたり、外では45年ほど前まで現役だった登り窯も、見ることができます。

瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム[瀬戸民藝館]
住所:愛知県瀬戸市東洞町17
定休日:月・火・水曜(祝日は営業)
営業時間:10時〜16時30分 (16時最終受付)
入館料:一般 600円 / 高校生以下 300円 ※ギャラリーの入館は無料。
アクセス:尾張瀬戸駅から徒歩30分ほど。
駐車場:あり
Instagram:setohongyo_hanjiro8th
江戸時代中期から続く窯元「王子窯」
洞地区で江戸時代から続く、すり鉢を主力に作り続けてきた窯元。ぽってりとした風合いの志野のすり鉢は、王子窯の代表作です。
創業以来、登り窯で焼成し、1968年からは重油に切り替え、現在では、ガス窯を中心へ。現在、当主の加藤創也さんが、王子窯の歴史をひもときながら、自然の釉薬を使い、現代に合うサイズのすり鉢を中心に作品を生み出しています。
工房に併設されたギャラリーは、もともとは作業場として、たたら成型や仕上げをする場所だったといいます。

それを改装して誕生したギャラリーでは、すり鉢をはじめ、皿、湯呑、花瓶など、過去の作品から現在の新作まで、さまざまなやきものに出会えます。
また、王子窯の工房=“モロ”は、瀬戸市の有形文化財に指定されています。明治33(1900)年に建てられ、乾燥を避けるためにほとんど窓がない構造です。
まるで博物館のような工房ですが、現役で使われています。
9月15日(土)からは平日に加えて、毎週土曜日も開館なので、ぜひ訪れてみてくださいね。
王子窯
住所:愛知県瀬戸市東洞町62
定休日:日・月曜 ※土曜オープンは2025年9月13日から)
営業時間:10時から16時
アクセス:尾張瀬戸駅から徒歩約30分。
駐車場:あり
Instagram:oujigama
2025年Open。陶芸家・深田 涼が開く「ギャラリー器ばなし」
陶芸家の深田涼さんは、焼き物の色である「釉薬」に魅了され、研究を重ねて、さまざまなカラフルな器を作っています。

「ギャラリー器ばなし」は、もともと涼さんの曾祖父が金物屋として使っていた建物で、ここを改装して工房にして、2025年にギャラリーとしてもオープン。青と赤のとてもカラフルな建物で、すぐわかります。

こちらのギャラリーは月に4回程度、不定期で開放されます。涼さんが、初期から作り続けているプレートや酒器、アクセサリーなど、作ったものが並んでいます。開放日なら、お願いすると、お隣の工房も見学させてくれます。ショッキングピンクの壁や窯の色は、涼さんらしさが爆発しているので、必見です!
ギャラリー器ばなし
住所:愛知県瀬戸市東本町1-18
定休日:SNSでご確認ください
営業時間:SNSでご確認ください
アクセス:尾張瀬戸駅から徒歩9分
駐車場:なし(すぐ近くにコインパーキングあり)
Instagram:ryo_clay
伝統的工芸品 “瀬戸染付焼”をつくる窯屋「眞窯」

瀬戸市内でも山あいに位置する品野地区。鳥のさえずりが聞こえるような、のどかな場所で1919年に染付窯屋「眞窯」は創業されました。こちらでは、真っ白な生地に、藍色の呉須で絵付けする伝統的工芸品の“瀬戸染付焼”が作られています。

工房のすぐ横にギャラリーが併設され、お店に入ると、ピンポーンと音が鳴り、職人さんがやってきてくれます。ギャラリー内には、「眞窯」の様々なシリーズの器やアクセサリーなどが並んでいます。
眞窯(しんがま)
住所:愛知県瀬戸市中品野町330
定休日:火・木・土・日曜
営業時間:10時〜12時、13時〜16時
アクセス:
[車]東海環状道の「せと品野」インターを出て、信号を左折して500mほど。
[バス]「尾張瀬戸駅」のロータリーにある瀬戸駅前バス停から「1H 古瀬戸経由 しなのバスセンター行」or「2H 瀬戸駅前 古瀬戸経由 上品野行」に乗車。「品野」バス停を下車、徒歩約5分。
駐車場:あり
Instagram:ceramic_studio_singama
デザイナーの想いを瀬戸の技術で形にする陶磁器メーカー「セラミック・ジャパン」

「セラミック・ジャパン」は、瀬戸・品野地区にある、1973年設立の陶磁器メーカー。デザイナーとのコラボを軸に、瀬戸の窯元とコラボしたり、社内の工房で製造も手掛けています。
創業当初から、国際陶磁器展への出展に意欲的で、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションに選定されるなど、世界的に高い評価の製品を数多く生み出しています。

基本的に会社の営業日にショールームを訪れることができ、詳細な日時はInstagramでご案内されています。訪れるときは、事前に連絡しておくと安心です。到着したら、近くのスタッフの方にお声かけくださいね。
セラミック・ジャパン
住所:愛知県瀬戸市中品野町60-4
定休日&営業時間:営業日に関しては、Instagramでご覧ください。
アクセス:
[車]東海環状道の「せと品野」インターから2分。
[バス]「尾張瀬戸駅」のロータリーにある瀬戸駅前バス停から「2H 古瀬戸経由 上品野行」or「2 瀬戸駅前 古瀬戸経由 上品野行」に乗車。「中品野」バス停を下車、徒歩約5分。
駐車場:あり
Instagram:ceramicjapan
お料理が映えるモダンな器をお探しなら「椿窯」
1979年に、定光寺のふもとに位置する水野エリアに開窯。日本初の釉薬灰釉が使われた陶器「古瀬戸」をリスペクトし、磁器に自然灰の釉薬を使って表現する“椿窯グリーン”が美しいです。
また、当主の林栄治さんが原型を彫ったモダンな形が特徴で、和洋どちらのお料理にも使いやすいです。工房からすぐ近くにギャラリーが併設され、訪れる前にお電話してお出かけくださいね。
椿窯
住所:愛知県瀬戸市水北町531
定休日:土・日曜・祝日(訪れる前に、お電話をおかけください)
営業時間:10時〜16時
電話番号:0561-48-1265
アクセス:
[車]東海環状自動車道せと赤津ICから車で15分
[バス]新瀬戸駅から名鉄バス「22 or 23 ・水野団地 中水野駅経由」に乗り、瀬戸水野郵便局下車。徒歩1キロ。
駐車場:あり
Instagram:tsubakigama2018
瀬戸・赤津で約370年続く老舗窯元「喜多窯 霞仙」
赤津は伝統的工芸品「赤津焼」が作られる地区です。赤津焼の特徴は、赤津焼が日本六古窯の中でも、最初に釉(うわぐすり)のかかった本格的な技法を始めたことにあります。平安時代に灰釉からはじまり、鎌倉時代には鉄釉、古瀬戸釉などが出現し、江戸時代初期には7種類が釉薬の技法として確立しました。
「喜多窯 霞仙」では、瀬戸の良質な陶土を使い、これまでに受け継がれてきた伝統的な技法や釉薬を使い、日々の生活が楽しく、豊かになるよう、手間を惜しまず、丁寧に作っていらっしゃいます。十二代・加藤裕重さんは、多くのひとに知ってもらうため、これまでの経験で培った技術を用いて、圧倒的な早さでつくり、リーズナブルな価格で提供されています。

喜多窯 霞仙
住所:愛知県瀬戸市赤津町71
定休日:HPのカレンダーをご確認ください。営
業時間:10時から17時
アクセス
[車]せと赤津ICから車で約7分
[バス]尾張瀬戸駅から名鉄バス「10 古瀬戸経由 赤津行」or「11 一里塚 太子町経由 赤津行」に乗車し、「大松」バス停下車、徒歩5分。
駐車場:あり
Instagram:kasenpottery
赤津地区の窯元を知りたいなら「赤津窯の里めぐり」HPをチェック
赤津地区は、瀬戸でもっとも窯元が密集しているエリアです。工房開放イベント「赤津窯の里めぐり」のHPでは、参加している窯元たちの普段は見学できるかどうかの有無が記されています。こちらからも、チェックしてみてくださいね。
瀬戸には、まだまだ工房はたくさんありますが、人脈とコネあるいは、度胸を必要とする先が多いです。まずは、ご紹介させていただいた工房ギャラリーへぜひ訪れてみてくださいね。